Cocco Lifestyle blog

日々の「実験」について書いてます。

神田橋処方を調べてみて「十全大補酒の謎」が解けた気がする

ふと思い立って神田橋処方について調べてみました。

 

神田橋処方は杉山登志郎さんの本に出てきました。

 

 

どの本だったかなとめくってみたら、神田橋処方の成分なども載っていて、自分の記憶力って・・・・というのを改めて思いました。

 

発達障害薬物療法』から一部引用しますと、

 

フラッシュバックの特効薬が神田橋処方である。これは、桂枝加芍薬湯(もしくは小建中湯または桂枝加竜骨牡蛎湯)2包、四物湯(もしくは十全大補湯)2包を分2で服用してもらう。(後略)

 

とのことです。

 

PTSDとフラッシュバックの治療に関する神田橋條治さんの講演録もアップしてくださっている方がいらしたのでリンクしたいと思います。

(テープ起こしの多大な労力に感謝します)

 

shinagawa-lunch.blog.so-net.ne.jp

 

この講演録は全体を通じて含蓄がありますが、処方に関する部分を引用させていただきます。

 

漢方です。四物湯(シモツトウ)と桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)という漢方があります。ツムラでいうと、71番と60番です。これを合わせて1日1回~2回、ひどい人は3回飲ませると、フラッシュバックは1~2ヵ月で随分軽くなります。これをどういうふうにして発見したかといいますと、ここら辺からだんだん怪しげになるので皆さんは嫌いかもしれないけど。僕は薬を使うときに、その人の全体の気をみます。向こうから気が来るのに薬を出して、その気を打ち消せるかどうかというのをみるんです。しかし、そんなことはどうでもいい。発見の経緯は怪しくても大切なのは結果だから、使ってみてください。

 

四物湯は衰弱した細胞を支えるような作用で、桂枝加芍薬湯はてんかんにも使います。そのふたつを使いながら脳をにらんでいましたら、こういうものが見えるようになったんです。(図1,2)

 

 

四物湯って、20年くらい前に京都の高尾病院に通っていた頃に、似た感じのやつを処方してもらっていたなーというのを思い出しました。当時は、身体が弱り切っていましたが、身体のしんどさがかなり楽になった記憶があります。

それから、数年前に佐賀の温心堂薬局の複方十全大補酒を漬けて飲んでいましたが、これは「劇的に」効きました。

 

 

参考:

 

coccolifestyle.hatenadiary.jp

 

改めて複方十全大補酒の中身を見てみると、

 

ww7.tiki.ne.jp

人参20・熟地黄20・茯苓15・黄耆15
大棗10・白朮10・当帰10・芍薬10
センキュウ10・桂皮10・生姜5・甘草5

 

だそうです。

 

 

 

んで、ツムラ十全大補湯を見てみると、

 

十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ): ツムラの漢方処方解説 | 漢方について | ツムラ

 

黄耆(オウギ)、桂皮(ケイヒ)、 地黄(ジオウ)、 薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)川芎(センキュウ)、当帰(トウキ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、 甘草(カンゾウ

 

で、生姜と大棗がないですね。

 

そして、

 

桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ): ツムラの漢方処方解説 | 漢方について | ツムラ

 

芍薬シャクヤク)、桂皮(ケイヒ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)

 

 

 なので、温心堂薬局の複方十全大補酒で、ツムラ十全大補湯と桂枝加芍薬湯をカバーできちゃってますね。

(薬酒かエキス剤かの違いや成分の量の違いはとりあえずおいておきます)

 

 

 わーすごい、知らない間にセルフ神田橋処方をやっていたっていうことですね。

 

実は、複方十全大補酒がなぜこんなに「効いた」のかが不思議だったんです。

虚弱体質にいいのは分かるんですが、それだけなの?というのはうっすら思っていましたが、フラッシュバックを和らげるということであれば、なんか納得がいく気がします。

 

以下は神田橋條治さんの講演録と対照させての話になります。

 

もう一度リンクします。

 

神田橋PTSD:品川心療内科Panalion:So-netブログ

 

この中で幼少期のPTSDに触れた部分があって、

 

話は変わりますが、3歳、4歳ぐらいの外傷体験で一番多いのは、両親の仲が悪いとかそういうことじゃない。一番多い外傷体験は引っ越し。それを覚えておいてください。考えてみたらそうでしょう。子どもにとっては、見えている世界がぱかっと変わるわけだから。もう宇宙旅行みたいなものだ、「あれ?」と。

 

昔、九大にいるころ、神経症の治りやすかった人と治りにくかった人のバックグランドを、村田豊久君たちと一緒に調べたことがあった。何も有意差は出なかったけど、1つだけ出た有意差は、幼稚園までに引越しが多かった人が治りにくいということ。その意味は説明できなかったけれど、それを思い出して今しゃべっているのです。引っ越して世界がころっと変わったら、子どもはわからない。

 

対策としていいのは子ども部屋に地図を置いて、「ここからここへ行くのよ」とか、「ここを汽車と車でこうやって行くのよ」と。そして、前の世界は失われたんじゃなくてちゃんとあるということを確かめるために、お休みのときにでも、また同じルートを通って行ってみる。やはりなくなっていないということ、自分が動いたということがわかれば、そうするとそれで外傷体験は、幼い時だったらすぐに治ります。そうやって連続性が断ち切れないようにしてあげてください。それを何人かの人に教えてあげて、とても感謝されました。つまり、引っ越した後に寝小便が増えたり、じんましんが出たりしたのが治ります。

 

フラッシュバックもしくはパニック発作(その違いが今ちょっと分からなくなっていますが)の自分最古のきっかけは4歳頃で、幼稚園のときに友達についていったら、友達は園の外に出ようとしちゃったんですね。

園バスが置いてあるエリアが電気もついていなくて、だんだん怖くなってきます。

私は、そっち行ったら怒られるからダメだって!って思っているんですが、声が出ないまま友達についていくという感じの記憶です。

 

私の場合、結構ずっとパニック発作に近いものを起こしているんだなと2年ほど前に気づいたんですが、そのルーツをたどっていくと、4歳頃のこの心象風景にたどり着くという感じです。

 

ただ、これが自分史上最古のものなのかはよく分かりません。

神田橋條治さんの講演録にある、幼少期の引っ越しが外傷体験と、成長してからの神経症の予後の悪さにつながるという話を考えると、世界を広く見るだけの資源がない発達時期に、世界がコロッと変わるような体験をすることが、外傷体験につながるということですよね。

私の母親は突然眠りに落ちる人で(おそらくナルコレプシーのせい)、私が乳児の時代にもあったんじゃないかと思うんですよね。

私を抱いていて一応笑顔だった人が、突然黙って無表情になって、眠りに落ちる、みたいな。

そういうことがあったとするならば(物心ついてからの母親の振舞いから、それは大いにあると思う)、乳児にとっては世界がコロッと変わる、時系列が断絶するような体験になっていてもおかしくないんだと思うんですよね。

 

父親は父親で、あの年代の人にしては子どもの世話を良くする人だったと思いますが、突然怒り出す人だったので。(あ、まだ生きているので過去形にしたらダメですね)

 

 

というのがつながりだしたのが、複方十全大補酒を摂っていた2015年以降だったりするわけです。

 

何故なんだろうと思ったら、フラッシュバックが緩和して、自分の中の時系列がつながりやすくなったから、ということだろうと感じます。

 

 

講演録に書かれていますが、フラッシュバックが緩和あるいはなくなったらそれでいいかというとそういうわけではなくて、

 

じゃあPTSDはフラッシュバックの処理でいいのか。そんなことはありません。しかも、フラッシュバックは押さえ込めばいいと必ずしもいえないかもしれない。フラッシュバックというものは、実は脳の記憶の系列が過剰負荷を減らすために行っている、脳という生体のコーピングである可能性があるでしょう。すぐに皆さんが思い出されるのは、フォースド・ノーマリゼーションの現象ですね。フォースド・ノーマリゼーションに非常によく似ていると思うんです。桂枝加芍薬湯という発作に対する漢方が入っていることから、何か似通ったものがありそうです。つまり、フラッシュバックを抑えることは緊急処置として必要だけれども、これは生体の自己治癒のプロセスに対して待ったをかけているかもしれないです。ですから、抑えて喜んでいたら駄目なんです。とりあえず緊急処置をして、そこから治療が始まるわけです。次に精神療法が必要なんです。

 

講演録の上の方で、神田橋條治さんのPTSD治療の骨子が書かれています。

 

PTSDの治療において僕が依拠している枠組みは、中井久夫先生がお訳しになった、ハーマンさんの『心的外傷と回復』です。あれが、治療上、一番役に立つと思います。ハーマンさんの本は非常にいっぱい書いてありますから読みにくいですが、簡単にいいますと、PTSDの人の治療はまず、安全な、「安心できる今」をつくってあげる。そのためには主として環境でしょう。環境として、その人が「安心できる今」をつくってあげる。「今」というのはここに現実としてありますから確かな環境です。その次には、この安心できる環境から PTSDという体験を眺めて、それに対する意味づけとか納得とか何かをしていく。「今」を直接にゆさぶらなくなったこの体験は自分を圧倒するものではないので、自分の懐にこの体験を入れ込んでしまう。自分の人生史の中に組み込むことによって、外傷体験は歴史上の出来事として定着される。それがハーマンさんの治療の骨子であります。それに沿って治療をやっています。

 

精神科に通うという仮定で話を進めると、お医者さんとの間に、安心できる関係を作って、その中で少しずつPTSDの体験について思い出しながら、その体験を過去の中に位置づけていくことで、その人の納得を生み出し、過去のものとして認識できるようになるということですね。

 

そういうプロセスを阻害するひとつがフラッシュバックということも講演録の中で書かれています。

なぜならば、講演録ではこういう書き方ではありませんが、フラッシュバックというのは、本人の意思に関わりなく、突然やってくるもので、嵐のようにその人の全体を巻き込み、時系列や人間関係に関わる認識を容赦なく叩き壊していき、フラッシュバックが起こったときに誰かが居合わせていたら(他者がトリガーになることもある)、周囲の人も巻き込んで、大事な人間関係をも叩き壊してしまう可能性を持っているからですね。

 

そして、叩き壊された後の残骸(自分の健康状態の場合もあるし、実際の対人関係の場合もある)を見てまた傷を深めることもあるでしょう。

 

そういうことを考えると、フラッシュバックを緩和することは非常に大事ですが、それは、ある程度健全で安全な自己認識や生活習慣、対人関係を構築していくために必要なプロセスであって、フラッシュバックそれ自体を取り除けば事足りるという種類のものでもないということだと思います。

 

 

余談ですが、こういう話を書いている間に、30センチの距離から見えづらかったPCのモニターが2メートルくらい先からでも読めるようになっている不思議。

 

 

ただ、個人の体感でいうと、フラッシュバックやパニック発作のような激烈な反応(個人的には、オリヴァー・サックス流の片頭痛も入れていいと感じますが。詳しくは楽天ブックス: サックス博士の片頭痛大全 を参照してください)は、自己認識を妨げる濃霧のようなものであって、濃霧が少しでも薄くなると、回復への糸口が見つかりやすくなるという気はしています。

 

偶然での出会いだった複方十全大補酒は、セルフ神田橋処方みたいな役割だったということが分かり、こういうのも、おそらく自己認識の助けになるんだろうと思います。

 

ただ、今回書いたことは、あくまでの私個人の体感ですし、複方十全大補酒がフラッシュバックに効くよ、とかはどこにも書かれていませんので、そこはお間違いのないようにお願いします。

私の場合は、おそらく薬酒という形で生薬を摂取するのは結構合っていそうだというのと、複方十全大補酒も体質に合っていたというのが大きかっただろうと思います。

あと、漢方製剤の中には副作用が報告されているものもありますので、自分の判断で漫然と飲むのではなくて、こういうことに長けているお医者さんと出会えるのがいいんだろうなと思います。